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美は乱調にあり







瀬戸内寂聴氏の評伝小説の中でも

とくに傑作といわれるのがこの本、美は乱調にあり、でございます。



瀬戸内さんのは短編は全集に入ってるのは全部読んだけど、

評伝は樋口一葉とか、あと幾つかしか読んでない。

わりとアクのつよい「近代日本の女性」が多いので面白いんですけどね。

実は、「美は~」もタイトルだけしってる作品でしたが・・・



角川学芸出版から新装版が出たので、読んでみました



とびきり面白いです。



乙女の日本史 とか 乙女の日本史 文学編でもちょろっと書いたのが

青鞜のオンナたちです。



いわゆる明治末期~大正初期にかけての日本で、

「新しい女性の生き方とはなにか」とか

本当の自由とはなにか・・・を追求した、

伊藤野枝や平塚らいてう(平塚明子)、そして彼女たちの恋人たち(男女ふくむ)の

「恋と革命」の群像劇なんですが・・・

・・・

・・・・・・



「恋と革命」の内実がいかに、アレなもんだったのかを

ギリギリと描いておられます。



自由を求める!!っていうとかっこいいけど

何が自由であるかがわかんないから、とにかく、思ったことをやりまくってしまうわけです。



暴走機関車・伊藤野枝!!!








 

今の時代だったら



「・・・アホですか?」って口にも出さず、ただ薄笑いを浮かべておもうようなことを、



(たとえば、伊藤野枝は、夫である辻というオトコの子供を妊娠中に

別の金持ちオトコからもらった恋文に返事をかいてると、

妙に気分がもりあがってカレのほうがが好きかも・・・!

とか思いこんで、誘惑してしまう
、とか)



自分も傷つくし、相手もボロボロになるのを

わかっていても、やってしまう。

とめられないやめられない

炎上マニア



最近の若い子は、中学生でも、こういうことしないと思うんですよね。

傷つくのがわかってるから。

でも、二十歳もすぎてるいい大人がバンバン無鉄砲にやってしまう。



それにしても書いてるモノが好きだと

その人自身も好きになるって・・・

今でいうメールDE恋愛ってやつですか。



どんだけ青いんですか、熱いんですか・・・って話。





今の社会なら「・・・アホですか?」って蔑むか、黙ってニヤリって笑うだけのことを

大正時代には「とんでもないヤツらだ!」と怒ってくれる世間があったんですけどね。



彼らには旧弊な世間と闘うというイメージがありましたが、

止めてくれるひとを振り切って走ってしまった・・・という

側面も強い気がします。





元に、暴走機関車から平塚明子(らいてう)は途中下車していますし。それも寿(コトブキ)下車。

編集長をつとめてた雑誌「青鞜」も伊藤野枝にきっぱり譲り渡してしまってますしね。



というか、青鞜って思想雑誌ではなくて、最初はリベラルなお嬢さまによる女性作家の作品をあつめた文芸誌だったんですけどね・・・紆余曲折あって、過激な思想を内包していくのです。



その経緯に男女問題がかかわってくるんだけど、

ほんっとに日本の青春ストーリーだな、と思いました。ドラマ化されるんなら、

向田邦子/久世光彦 のテイストでも、

もちろん橋田壽賀子/石井ふく子のテイストでもなく、

クドカンワールドだなって。





現代に匹敵する・・・いや、現代以上にオトコが不作の時代だったんじゃないかー

と思いました。



平塚にしても、伊藤にしても、旦那を養ったり、引っぱったり・・・とにかく主権を握ってる。



平塚が結婚した「万年美少年」のヒロシなんて、

おニク食べたら体調くずす、文字通りの草食ですしね

 ここには出てこないけど、与謝野晶子も夫の鉄幹のぶんまでガシガシ稼いでましたし。





しかし、





ダメなオトコほどえらばる。



これは何時でも言える真理なんですね。



えらばるオトコが多い時代はオンナもダメにされる



ということもいえると思います。



つまり、オトコの価値が落ちると、オンナもダメになる(その逆もしかり?)。





いずれにせよ、ダメンズの重力にひきずられ、

ぐちゃぐちゃにされていく才媛たちの姿が

この小説のクライマックスなのでございます。




恐いのは、懊悩を表現するために、20行くらい改行なしで

つっぱしって書かれてるトコ!



そしてとにかく圧巻なのが、大杉栄のだめんずぶり。桁の違うだめんずです。



大杉栄の生活費

大杉の妻・保子の生活費

大杉の愛人(第二号)・伊藤野枝の生活費



そして自分(愛人・第一号)の生活費





これらすべてを、婦人記者の市子さんひとりが稼いでるんです(笑

それも大杉栄の提唱する「多角的恋愛の実験」のために(笑



ーーー貧乏人が光源氏気取ろうたって、そりゃ問屋が許しませんって。



嗚呼、それが「恋と革命」ってか?(苦笑



もう彼らみたいな人たちは出てこないでしょう。でもそのかわり、

確実に現代日本の社会・文化は年老いてしまったなって思ってなりません。



by horiehiroki | 2010-09-22 23:42 | 読書