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「恐い絵」で人間を読む

中野京子さんのご本はとても面白いですね。

知識と感性のバランスがとてもよいし。

というわけで、少し前のクロワッサンで紹介されてた

中野さんのNHK新書・

「恐い絵」で人間を読む

も読んでみました。



ま、ぶっちゃけ「恐い絵」ってのは・・・

(「恐い絵」など以前の著作に掲げられた絵画にくらべ)

ホントに「恐い」のだろうか、的なことも考えたけど、

中野さんのおっしゃりたいメッセージは充分伝わったのです。



自分にも看板文句として

「乙女」とか色々、ついてきますからね・・・(w



この本の冒頭は血統を守るために近親結婚をくりかえし

その血の内部から崩壊していくスペイン・ハプスブルク家の話、

さらにウィーンの「本家」ハプスブルク家が19世紀末~20世紀初頭に

終末を迎えていくお話などなど、それから処刑寸前にダヴィッドの悪意ある筆

描かれたマリー・アントワネットのスケッチの話

ざつくりとした絵なのに加齢を強調する、

首のシワがクッキリ描かれてる
ことに中野さんは注目)など、

主に黄昏の歴史人間ドラマが語られます。



antoi.jpg病的であればあるほどみょうに色っぽく現代人(僕だけ?)には

感じられるですけどね。



それに関係してか、シーレの「死と乙女」を掲げた章では

中野京子さんの説になるけど、「ヨーロッパ中世における死とエロスの関係は薄かった」

というお話もされており、興味深いです。



「中世における死に、エロスは無縁でした(204ページ)」。







もちろん絵画にはさまざまな鑑賞法と感性があり、

諸説はあるでしょうが、

「死と乙女」とかのテーマに独特の (わかりやすい)エロス要素が

プラスされてくのは、 たしかに19世紀末以降だった

という気もします。

思えば、エロス(生の欲望)に対して、死の欲望である「タナトス」って概念が

フロイト先生によって明文化されたのも当時でした。

もちろん、シーレやクリムト、さらには「病んだ子」などのシリーズを描いた

ムンクなどなど、「死とエロス」に19世紀末の画家たちは魅了されてしまっていた、

といってもよいです。興味深い示唆で満ちた、新書でした。





ムンク「病んだ子」



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ちなみに本書であらためて「ああ・・・そうだったな」と思ったのは

公共の美術館という概念が、かなり、まだ新しいものであるということ。

ルーヴル宮殿内に美術館が誕生し、一般公開されたのは1801年だから、

まだ200年程度なんですよね。





by horiehiroki | 2010-12-03 00:39 | 読書