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KAGEROU

そろそろ、今年のクリスマスプレゼントについて

白状してもイイ頃合いかな、と。



KAGEROU、もらいました。



kagero.jpg
もらってしまいました・・・



電車の中で、2章ほど読んで

「(意外と)文体へのコダわりがあるんだな」と思ってた程度でしたが

先ほど、あらためてもう一度本を開き、

再チャレンジしてみたところ、けっこうグイグイと惹きつけられ

40分ほどで一気に読み終えました。








まず最初に、KAGEROUは、「純文学」作品ではないと思います。

この観点からこの作品を批評することはフェアではありません。

それを目指して書かれたというわけでもないでしょうね。





いわゆるヤング向けのノベルの類と一般向けの

小説の間くらい(まさに、ポプラ社が抱える読者むけ?) 。



・・・そういう条件の本として、僕は十分に

「面白く読める」作品だと思いました



じゃっかんの青さ、荒削りを感じるのは事実ですが。



自分が彼の担当編集者で、この作品を書いた筆者が水嶋氏ではない、

もしくは、そうだと完全に知らないのであれば、

発刊=デビューをしてもらうことを前提に、

それなり以上の準備期間を置いて、

作品を煮詰めて仕上げていくことを選択するレベルでの

完成度です。

そういう本来は「期待で賞」レベルの作品が、

ものすごく売れた、ものすごく話題を集めてしまった所に

「想定以上」の事故的な何かがあってしまったのかな、とも思いました。



しかし、そんなKAGEROUを評価するさいに、版元が

ポプラ社だったことを、つねに、最初に思い出しましょう。



各種文学賞は版元が、じぶんの会社のカラーにあった作品で、

販売力がある、と判断した作品に評価を与えるためのものです。



カラーが違うと判断された場合、いかに文学的な価値があろうとも

賞の選考からは外れるというのが常識なのをまず、書いておきますね。



たとえば自分もこの春先にある作品の帯を書かせてもらうために

(ポプラ社のピュアフル文庫)。ポプラ社が発刊してる色んな作品を読ませてもらいました。



ピュアフル文庫が、若い世代向けでありつつ、それ以上の年齢、たとえば30代位の人なども

幅広く読んでるという事実を考慮すると、そういう客層を抱えてるポプラ社が

KAGEROUを評価した、というのは大いにアリだとは思うわけですよ。



KAGEROU=徹頭徹尾,ファンタジー小説



です。これを忘れてはなりません。



KAGEROUの特徴は、とても映像的な作品。



それゆえに読みやすいし、目を前に、前にと進ませるチカラに富んでいます。



個人的には一部で話題になったらしい、3ページ目の「三日月」よりなにより、



美青年と四十路のおっさんがぴったりくっついて歩いていく様子を

昆虫の交尾」などと表現した水嶋先生の感性に驚愕しました。



全体的にも、美青年キョウヤと主人公のオッサンにやおい臭が

感じられてならないのですが・・・。



水嶋氏は腐男子なのか? (笑



映画とかドラマ的というより、漫画的というのが一番ぴったりくるんです。



むさい男と美青年組み合わせたがる所など、まさに

きたがわ翔的。



っていうか、まぁ…内容も漫画的ですね。よい意味でも、悪い意味でも。



色々、小道具なり背景なりは丁寧に描き込んではあるけど、

バボーンとリアリティがトンでる所も、きたがわ風。

最後になって畳み掛けちゃうところも、きたがわ風。



とにかく、きたがわ氏の「DEATH SWEEPER デス・スウィーパー 」って作品が

脳裏にチラついてなりませんでした



kitagawa.jpg(ちなみに、まさに「生と死」を扱ったこの漫画、最初はめっぽう面白かったのに

話がコゲついてきたなぁと思ってたら、

大地震がとつぜん起きて全て死に絶える
という、

驚愕のオチがついてます)

 

くりかえしますがKAGEROUの長所は漫画のプロット的なおもしろさです。











恐らく水嶋氏は頭の中で映像を思い浮かべて、

それを書いていけるタイプの才能の持ち主で、これは作家としてはイイ資質。

短所は、シーンとシーンのつなぎ合わせが、かなり、よくない所。



たとえば104ページの「+」マークがついてる部分の前後の流れですね。

具体的にここで書き記すことは自粛しますが、

映像・漫画として見せる場合ならともかく、文章の場合だと

この部分、ずいぶん読まないと、何がどうなったか、分からない。

それが主人公の困惑を読者にわかってもらうための水嶋氏の

意図だったといわれても、上手く意図を感じることができにくい。



あとで、あぁ、そういうことなんだろう、と読者は(想像をめぐらせて)

思うくらいなトコが関の山。こういうところが残念です



このようにパーツ単位の不整合さが、しばしば気になります。

それこそキョウヤさんの手みたいに、わるくいえば

フランケンシュタインみたいになっとるんですね。



ほかにも、いろんな「ありえない設定」、作者が小説を

うまくまとめるためのご都合主義的な設定については…

あえて短所というか、グレーゾーンとして捉えましょうかね。



そこにこのファンタジー小説としての、独自の色があるんだ、

と考え・・・られなくもないので。



ただ、前半部と、少女と再会する後半部では、やはり大きなトーンの違いがあります。

ありすぎ。前半部が、きたがわだとしたら、

少女との心の交流を描いた後半部は、なんだか牧歌的な絵本みたいな感じ。

スノーマンとかああいうパステル系の絵柄にかわってます。

その違いの書き分けを一番したかった、

そしてラストにつなげていく・・・ということをしたかったと思われるので、

非難はしませんが。



もう少しスマートな表現上、解決法があるとは思いました。

数学でいえば余計な部分を含む「うつくしくない証明」になっちゃうかなー・・・

と。



というわけでダラダラと長くなりましたが、

KAGEROUを僕が総合評価するなら、内容的・文体的にも
箸にも棒にもかからない、つまらない作品とは思いません。



正直に告白すれば、かなりおもしろく読める部分も、かなり多くありました。

句読点の打ち方などにも、水嶋氏のコダわりが感じられました。

ある程度以上の水準をもった、エンタメ作品である、と考えます。



その一方で、この作品が2000万の賞金に値するとか、

「水嶋ブランド」の話題性ぬきに、

何百万部も売れる値打ちがあるとは、残念ながら、思えないです。

 

原文・作者の意図をあくまで尊重した(と思われる。

これに”プロ”の手が入ってるとは考えにくい)

ポプラ社には、自分も作家ですから、作家として敬意を表します。



しかしこの作品を、無名の新人作家の作品として売り出すのではなく、

「なんとか大賞受賞作」として売り出すには、

もう少し、プロの手ではなくとも、

プロの目線での修正は入れるべきだったとは思いますよね。

ポプラのためにも、水嶋さんのためにも。

 

by horiehiroki | 2010-12-30 02:53 | 読書