直衣をまとう~表紙撮影

8日は満開の御苑の桜を横目に、
四谷のスタジオに篭もってました。

有識装束の研究家であられる
八條忠基さんとお弟子さんに
着付けていただき、
次回作の本の表紙の撮影をしていました。

(ただいま、朝廷文化と天皇家の恋愛みたいなのをたどる対談本を辛酸なめ子さんと制作しています)

八條さんは、素晴らしい装束の世界―いまに生きる千年のファッションなどの著作でも有名な方です

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(こちらの本、オールカラーで写真も多数のっており、装束についての知識が得られるのでオススメです!)

たくさんいい写真がとれました。

最近では、いにしえの服を着る=コスプレ
と簡単に片付けられてしまいますが、さにあらず。

りっぱな文化研究です。

じっさいに着てみて初めて、この服が八條さんの著作タイトルにもあるように「いまに生きる千年のファッション」である理由がわかります。というか着ないとまったく分からない。

有識装束 イコール 平安時代のお公家さんの服でしょ?

という感覚は根強いですよね。たしかに、これらの服は平安時代の貴族の服に原型があるんだけれど、現在に伝わっている「モデル」は、江戸時代までゆるやかな進化を遂げた末の装束なのだそうです。

たとえば辛酸先生がお召しになった
ウェスト部分から前にたらすヒモ。

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具体的には、裳(も)とよばれる、いわば背中から後ろに引きずる形になったエプロン状の着物のヒモなのですが、肩から羽織っている唐衣(からぎぬ)と同じ色と柄ですよね。

これを合わせるようになったのは江戸時代も末、天保の時代くらいからだと八條さんがおっしゃっていました。あと、この「リボン結び」を応用したようなヒモの結び方も。リボン結びにして、ヒモを裏から持ってくるような感じにします。
現在にいたるまで、美意識は受け継がれているのですね。
さてぼくが着た、直衣の着付けを駆け足で追ってみましょう。

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下はズボン姿、上はアンダーウェアなどを着た状態で、装束における下着=小袖をきていきます。「袖が大きいじゃない、と思うかもしれませんが、袖の下が小さいから、小袖なんです」と八條さんから教わり、目からウロコ!
さらに、この上に、橙色の単(ひとえ)を着ます。この時点では(ふだんの洋服とくらべ)、ほぼ重みを感じることはありませんでした。

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ここで、直衣を着ていきます。
この濃い紫の直衣は、当時では20代の男性の着る色。
年齢を重ねるごとに直衣の色は白にちかづいていきます。

なお、この写真が撮られた時は、着付けの最中ですので、胸やお腹など前がバボーンと飛び出している状態です。これを八條さんとお弟子さんのお二人が手際よくササササと形を整えていってくださいました(帯に衣のあまった部分をおしこんでいくイメージ)

着付けの様子を撮影してもらってたんですが、これくらいの時から、だんだんとぼくの顔つきが変わっていってますね(w 



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装束の着付けがほぼ仕上がったのがこういう感じです。これに烏帽子もしくは冠をかぶって完成。袖が非常に長いので、たくしあげるようにして指先で袖を持ちます。

「重いでしょう?」と誰からも聞かれるんですが、実はぜんぜん重くない。たぶん重たい生地で出来た、冬のロングコートのほうが着ていて苦しい感じです。

幾重にもヒモでキュッとむすんだ袴が自然にコルセットのような役割を果たしてくれて、自然と姿勢がよくなります。

重みといえば、たしかに直衣をまとった時はずっしり来ましたが、実はシースルーに見えるような透け感のある織り方をしてあります。つまり、直衣の重たさ=心理的な感覚なんでしょう。


同時に、誇らしい気分になります。身体感覚も、通常より1,5倍くらいになりますね。
とても大きくなれた気分。
また、この生地は風を通すため、たんにオシャレな理由だけで透けて見えるわけではないんです。空気抵抗が少なく、思った以上に、歩きやすかった。

なお、着付け次第で、どうとでも見せられるのが、この手の装束の特徴なのだそうです。これは着付けが終わってから、手の位置の確認をしてるときです。袖がとても長いので、手で袖をたくすようにして持っているんですが、分かりますか?

お腹より上にあがると、商売人みたいになってしまうので注意です(笑

これらの様子については、また近日中に発売される本の中でレポートできたらやりたいなって思っています。

八條さんに分かりやすくレクチャーをいただき、撮影を楽しむ以上に、本当に濃密な時間を過ごすことができました! 本当にありがとうございます。
by horiehiroki | 2012-04-09 02:37 | 歴史・文化