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束帯を着る。

23日は、芳文社の体験漫画の企画&取材で、『にっぽん文明研究所』様の講座にお邪魔してきました。

本来は神職などに携わる方、そして専門的な知識が必要な装束の着付けに興味が必要な方に装束の着付けのお稽古の場を提供する会のようです。今回はその最終回ということで、男女ともにいろんな装束を着るための、八條忠基先生(有識装束研究の『綺陽会』主宰)による実技最終レッスン…でした。

というか、うたもゑのこうづき先生と担当編集のGさんとぼくの三人で今回飛び入り参加してきました。

「天皇愛」って近著の表紙で、八條先生には直衣を着せてもらったのですが、今回は衣冠と束帯、それから水干…などを着てきました。


かなりラフな部類の装束とされる水干

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※いろんな着付けをしてもらいました。
ちなみに、これは水干を袴におしこめた、いわゆる「こめずいかん」という着方。パンツにシャツを入れ込んでる感じですw ヒモが襟の部分についていますが、安倍晴明が好んだ、かなりカジュアルな(学生服でいうとボタン開けてるイメージの)着方みたいです。
なお、この水干を上半身に着て、下半身は女性用の袴をつけたのが白拍子です。


それから、いちばん格式が高いとされる束帯

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※本来は、襪(しとうず)という、足袋に似た形の靴下がわりのものを履きます、が、準備の都合上、今回は履けてません 笑 「平清盛」的な(w


これら二つ、形は似てるように思うかもしれませんが、着比べてみると
カラダの自由度がまったく違うのが分かりました…

着付けの時間も束帯を着るには、水干の2、3倍はかかります!

とくに束帯は公卿でも着る機会が限定されている、最高の格式の服なのですけれど、実際、これを着てみて、宿直(と書いて、とのいと読む)なんて行為は無理だなあーとつくづく思いました。

束帯が簡易化され、宿直にも使われたのが衣冠というものです。
ふたつは着心地からしても、まったくもって、別物でございます。たしかに解説本で見る限り、いくつかの小物が違うのは分かるんですが・・・。

束帯はまず、いわゆる下着の上に↓みたいな据(キョ)という帯を着けるところからはじまります。胸元が黒いのはヒートテックですw 



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役職などによって異なりますが、今回の据は「一丈」ですから、約3㍍はあります。重たいです、引きずるのは。

前。

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※束帯は専門の袴があります。織りで模様がはいっていて豪華です。足元はわりと他の袴にくらべて短めで、襪とか沓(くつ)とかが見えるようになってます。

つぎに束帯の「本体」を着ていきます。模様は唐草です。・・・というか、八條先生の神業でものすごいスピードで着付けてもらってる最中です。手が鳥みたいな感じでダラーンとしてるのは、これが着付けてもらう人のデフォルトの姿勢だからですw …ウソです。着せてもらってるだけのわりに、かなり疲れてきてます

後。


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この時点で、すでに束帯の帯であるところの、石帯が着けられています。コレがあるから、宿直には窮屈で・・・などとものの本には書いてあるんだけど、ぶっちゃけ、付けられてるのかどうか、よくわかりませんでした。・・・というのは軽いからではなく、背筋がビーンと伸びる感じ。そして背筋が、もじどおり「板につく」漢字でホントになにか板が入れられてる感じがするがするんですね。
ただし、うまく着付けてもらった場合、腰を締めてもらってるほうが、動きやすくなります。逆に。そして装束の重みを感じにくくなるという、魔法みたいな効果があります。
こうづきれお先生が一度チャレンジして結んでくれた袴と八條先生の着付けてくれた袴とでは、同じ動作をしてもらってるのに、大きな違いがあった。あれ、なんなんでしょう。


そのあと、ウェストをヒモで何重にも結びます。(ちなみに装束はほぼすべてワンサイズなんですが、さすがに180㎝以上の身長の人は想定されてないので笑、ヒモの結ぶイチが、他の人とは違うみたいです)
石帯はそれらのヒモ留めしたウェストの上から、装束の上から、ギュッとむすぶようにして着けるかんじです。

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そしてついに、太刀(たち)を帯びます。太刀はあまり重たくないのですが、ここに据(キョ)を掛けている場合、5㎏くらいはあります。だいたい斜め45度くらいに上げて持つのが、「かもめ尻?」などと呼んで伊達なんですけど、相当に持ち重みがしてきます。

それで、太刀の白い柄の部分は、鮫肌状になっていているのが、役立つわけですよ。エイの皮を使用しててザラザラしてるから滑らないというね。

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まぁ、いずれにせよ、母校の旗をかかげた応援団の旗持ちくんみたいな気分です・・・ 

ちなみに大河の「平清盛」では、公卿の方がた、束帯ではなく、束帯的なサムシングをみなさん着ておられます。背中にキョがくっついている的な。なんやねーん、と。これまで思ってました。

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せっかくやるのだから、ちゃんと着付けてほしい・・・などと思っていましたが、

先日、偶然、八條先生がFBで書かれた記事で知りましたが、「勘解由判官(かげゆのほうがん)」の職にあると、特別に、多忙を理由にこの着付けができた、のだそうです。

勘解由・・・国司(のちに官人一般に拡大)の交替の監査を行なった。平安初期以降、国司などの交替の時、後任者から前任者に交付する文書(解由)を審査した職  (岩波日本史辞典、広辞苑など~)

※ちなみにああいうキョの折りたたみ方はカッコイイとして大人気だったみたい。

ポストが空くと、勘解由になりたい!って人が殺到するくらいに。

でも、まぁ、ね、これだけ並み居る人々全員が勘解由のワケもなくですね、この着付けというのは(以下略

個人的には、引きずる方がカッコイイとおもうのだが。そういうのはダイアナ妃の結婚式のベールの豪華さがトラウマのレベルにまで組み込まれてる世代だからかもしれんですw
ヤハラちゃんと同じ。


ということですが、やはり難しいです。


着付けに膨大な時間がかかるという点。それから、スペースの問題。

前の人のキョを踏まないためには約3ー4メートル位の空間が要ります(身分とか流行とか法令で長さは変わる

さらにこれを着て(しなやかに)歩くこと自体が、すぐに出来るものではないです。

衣服自体の重さもありますが、直衣のように束帯は歩いていて空気を通さないため、空気抵抗も比較的、あります。


だから、束帯などは着付けが実物に近くなればなるほど、演技にならないんだろうなぁ、と思うのです・・・。


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これは束帯姿の源頼朝像です(伝・頼朝像という人もいるけど)。

衣服のデザインチェンジにすごく熱心だった鳥羽院(清盛では三上博史が怪演)以降の束帯ですから、現在の束帯以上にこわばった感じ。相当に鋭角的なデザインの肩になってます。・・・もっと動きにくかっただろうなあ

そもそも頼朝が座っている楽座という座り方が僕にはできません(笑
これ、股関節のストレッチに似てる感じなんですが・・・

僕は日本人ですが、正座自体がきついし、そもそも床にすわって何かをするということ自体が厳しくなってきてるのを感じました(笑

変わったモノと変わらないモノについて痛感した一日でした


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◇◇◇堀江宏樹の新刊もよろしくおねがいしまーす◇◇◇

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百人一首 うたもゑ

(日本じゃ)世界三大美人なんていわれてる小野小町。でもずっとモテる、恋をし続けるということは、あるいみ「たったひとりの誰か」に出逢えてないってことなんです。平安時代、百人一首に収められた歌人たちの歌をベースに展開する、絵空事ではないリアルにして美麗な恋愛絵巻まんがですー。

藩擬人化まんが 葵学園


大河ドラマでもそうですけど、江戸時代はなぜ「ああいう社会」なのか? なんで現在でも県民性は「ああいう風」に存在してるのか? …みたいなことが漫画+文でザックリと理解できます☆

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by horiehiroki | 2012-11-24 01:21 | 歴史・文化