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肉への慈悲

この前、ベイコン展を見にいったんですが、フランシス・ベイコンのインタビュー集が「肉への慈悲」と、あまりに奮ったタイトルなのにテンションがあがってしまいまして。読んでみました。

スタートダッシュというか、掴みはよくないかもしれませんが、それでも読み続けると「面白い」です。

ベイコンは不意に浮かんだインスピレイションを頼りにして絵を書く。
頭で考え出した何かを描くより、理由はわからなくても思い浮かんだという点で「純粋と思われる」、そんなインスピレイションを元に絵を書く。


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ベイコンには三枚で一つの作品となるタイプの絵が多い(参考上図)のも、そうして思い浮かべられたイメージは動的なものだから、それを描くには三枚という単位がもっとも適している…というんですね。(6枚でも何枚でも描けるけど、焦点がぼやける、とか言ってます)

面白い内容なんですが、どうも後世のわれわれにとって本当に面白いところを聞きそびれてる気がしてなりません・・・。

たとえば訳本の152ページ。

ベイコンは椅子に座ったまま、何時間も白昼夢を見ている。そこでイメージを閃く…という文脈のなかで

聞き手(デイヴィッド・シルヴェスター氏)「白昼夢では何を見るのですか」

ベイコン「とほうもなく美しい絵です」

聞き手「そうやって思い浮かんだ絵には構図があって、それに基づいて実際に描くのでしょうか」

ベイコン「ある程度はそうです」

・・・というあたりで、方法論を聞いた後でもいいので、僕なら「あなたはとほうもなく美しい白昼夢を手がかりに絵を書いていると仰いますが、ご自分の絵を美しいと感じられますか」というようなことを絶対聞くと思うんだな。

たとえば、僕がこの前、月刊美術で取材にいった「現代アート」の作者さんたちは自分の作品を「美しい」といわれて、怒り出すひとは少ないと思います。

しかし、例えば、美というものがビミョーなものになっていた、20世紀中盤~後半の「モダンアート」の文脈ではどーなんだろうとしばしば考えるんです。美アレルギーの時代。

これ、いわゆる”現代音楽”の場合でもそうで、美しい音楽はNGとする流派がありました。
アヴァンギャルドな作風でしられるドイツのラッヘンマンという作曲家は師匠のノーノに「トリルは駄目。ブルジョワ的だから」というようなことを言われ、きつく叱られたのだそうです。

この聞き手のシルヴェスター氏、そしてベイコンの態度はよくわからないけど。
すくなくともシルヴェスター氏は「美しいとは思ってない」ということはよくわかる(笑
しかし、これまでほとんど美しいなんて単語を発することがなかったベイコンが、「口を割った」のに、そこに議論をもっていかないのは・・・・・・なんとも残念でした。

ぼくからいわせれば。

美というものを定義する仕事、こういうのも今だからこそ始めてみたいですね。

わかりやすいようにはしてるけど、現代アート、現代音楽とか色んなジャンルを包括するような評論とか。



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◇◇◇堀江宏樹の新刊もよろしくおねがいしまーす◇◇◇

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藩擬人化まんが 葵学園

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by horiehiroki | 2013-06-06 13:35 | 読書