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ヘンな日本美術史、月下上海 など

昨年の入居以来、ずずずずずーっとトイレにまつわる不具合に悩まされてるんですが、今回はついに盛大に水漏れをはじめまして。
そのリフォーム会社を問い詰めた所、最初に派遣した職人がまったくの素人以下で工法自体が盛大に間違えてた、云々。

大きな会社に頼むってのも厳しいっすな。
結局、誰が来るかわかんないから。どういう基準で職人を選んでるのか、問いつめてやる予定です。

今回酷いのは、再工事のレベルだけでは済まなくなってるってこと。
ヘタしたら家自体が傾くトコでした。

自宅監禁時間が多いです。

ということで、色んな本を(すごい騒音と震動を感じつつ)読んでるんです、が。




・ヘンな日本美術史

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人気画家・山口晃さんの著作です。
”本業”の画以外にも、硬派な筆イラストで
色んなトコで作品を目にする機会が多い山口さんですが
実は上野の「油画科」(ようするに油彩科)の出身なんですねー。

で、この本は某カルチャースクールで「私見~」と題して
トークした内容にプラスしたそうで、
「江戸時代の絵はあまり好きじゃないので抜かした」
とか独特な構成になっております
雪舟への愛はヒシヒシと伝わってきましたが(笑

この本と並行して読んでた中に「文様の名前で読み解く日本史」というものがありまして、これを読んでると、起源は遥か昔の時代にあったとしても、いかに現代人の考える「日本美」が、江戸時代のひとによって完成されてるかがヒシヒシと伝わるものでしてね。

だからあくまで”画家の感じる美”について語るって本でもないし(そういうのは画家さんは作品で語るものですしね)、山口さんのこの著作はこの著作で興味深いし、彼自身の感性の見取り図といってよいものにしあがってました。

けっこう興味深かったのは、伝・頼朝像の顔の白さの理由は? となると
自分の場合はお化粧とか、そういうところにばかり感心が行くんだけど、
山口さんの場合は、・・・まぁ、読んでいただければわかるように
視点が違いまして、ほぅほぅと思えました。

山口さんは伝統的な手法、ビジュアルで書いてるようでいて、やはり現代アートのヒトなんだな、という当然のことが分かるというかなんというか。

あと、この本、「好きではなかった鳥獣戯画」みたいな感じの章題でいちおう古代から始まるんだけど、いかにも「山口さん、やっぱり鳥獣戯画好きなんでしょ?」と作風から判断されて振られたテーマだったんじゃないかと想像したり。

色んな意味で作り手の事情と気持ち、ってのが透けてみえるご本でございました。



・月下上海

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早大を卒業後、シナリオ作家として活動(しようとしたが、けっきょく挫折的なインタビューは新聞で拝読)、現在は丸の内新聞事業協同組合の社員食堂にて勤務中の山口恵以子さんの新作です。
2007年に作家デビューを果たした後、本作「月下上海」で2013年、松本清張賞(第20回)を受賞するまでの著作が(すくなくとも著者略歴に書いてい)ないということは、いろいろと試行錯誤なさってたんでしょうかね・・・
それはともかく、母親が読みたがりまして、私も拝読させていただいた次第です。

母親は「少女小説みたい!」っていって・・・装丁がソレっぽいですわな・・・半分くらいで止めてしまったんですが、たしかに商船事業で成り上がった八島財閥の一人娘で、美人で、流行画家、広壮な邸にすみ、夫は五摂家に次ぐ家柄の公家華族の血とフランスのダンサーだかなんだかの血を引く音楽家(で美形)・・・・・・・・などなどという設定がまさにソレなんだけど、作家・山口さんはこの女性を(当時としては)わりと高齢な女性として書いています。

そのリアルさがけっきょく本作をただの少女小説ではなく、大人向けの小説として読ませるだけの背骨になっていくのが中盤以降。私の母上はそこに辿り着くまでに(不幸にして?)ページを閉じてしまった一読者ではありました。
ヒロイニズム、ということばありますよね。ヒロイン主義というか。要するに出てくる男全部がヒロインに(濃淡こそあれ)好意のベクトルを向けて、ヒロインが色んなオトコの間をフワフワする、というような話。好意のベクトルが憎しみに向かってる男性もいたりするのも御約束。

ただし後半部、愛によって傷ついた女が別の愛によって救われる、なんて絵空事は描かれず、ハタで見る分には華麗な展開の結果、よけいに傷口がひらいていくんですねー

その傷口からはもう血は流れなくなって、一つの空洞になってしまってる、ような。

だけど、このヒロインが強いのは(そして魅力的に見えるとしたら)、その空洞にあらたな希望だのなんだのを詰め込んでいけるとこなんですよねー。
古い木は内部が空洞化していくそうで。色んな理由でできた穴を自力ではうめられなくなり、不安定になり折れたり倒れたり。だからそこにセメントを注入したりして治療しなくてはならんのだそうです。
この女流画家さんは、それが自力で、しかも自然にできている。
そういう女を描けたのも山口さんという作家が、平坦なキャリアとはいえない中でも、クリエイターとして有意義な年を重ねてこれたから、だとおもうんです。

by horiehiroki | 2013-10-31 13:20 | 読書