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カテリーナの旅支度

内田洋子さんの「カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想」を読みました。

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お勧めです。

描写は簡素なのに、イタリア各地の風景が鮮やかに脳裏をよぎります。
不思議ですよね。
行間にイタリアが生きている、
そう喩えるしかありません。

須賀敦子さんの随想からストイックすぎる、求道的な部分を弱めたら、内田さんになるというイメージもありますね。

読者はそう聞いて、よけいに「え、どんな小説?」っておもうかもしれません。

小さいけれど豊かな(食)生活が送られているワイナリーの主婦が、日々の雑用の中でいつしかアルコールに救いを求めるようになり、それは中毒になり、それをきっかけに夫は農業を辞める決心をする。
そこからわずか1ページ半で夫婦の再生が描かれます。
魔法のような筆致です。しかも行間に語らせるというようなことはせず、必要なだけ必要なことばがそこにある、ということ。
これは凄い匠の技ですね。

「四十年後の卒業証書」も母と娘の対立、愛憎、しかしお互いを本当は必要としているから、どこでどういうかたちで折れるかを知り尽くした女二人の物語です。
「犬を飼って、飼われて」という作品は、犬のための散財に見えて、本当は飼い主が必要としているから豪勢なペット用品を買ってしまう、というあたり。別に頼まれてもないのに「貢いで」いる。
それこそドラマ「紙の月」のヒロインたちを思わせるような虚さを、そこはかとなく抱えこんだ登場人物も出てくるんですね。

「一人暮らしなのに相棒がいる。それでもはやり独りきり」

犬と暮らす独身者のきもちってこの言葉につきるんだろうな。


by horiehiroki | 2014-02-01 10:25 | 読書