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中国化する日本 を読み終えて

前回の記事に引きつづき、
最後まで本書「中国化する日本」ザックリ読みましたが、
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與那覇氏のウリは徹底してニュートラルな視点、ということでしょうね。
たとえば明治維新について語るとなると、旧幕側と新政府側の二派に書き手はわかれ、言説を展開することが伝統的には多いです(そしてそれはおうおうにして、語り手の祖先の立ち位置を踏襲している)。

ところが與那覇氏は徹底して、そういう血縁的文脈から離れて歴史を見ようとします。ちょうど外国人が日本史をみるように、ドロドロした「私怨の日本史」からは離れようとしている。遠いところから、原理/原則というようなものを見つけるがために歴史の細部に触れているという印象がある。これがウリなんです。

彼が依拠するのは(彼が発見した)二元論です。たとえば、貧困問題で例にすると(出世する機会は与えられており、あくまで実力社会だから)「貧乏は自己責任」とする「中国化」社会。
その反対概念であり、(身分に囚われ、出世するための機会はさほど十分ではないがため)貧乏は社会全体の責任として考える「江戸化」社会。

いずれもニュートラルな概念であり、新政府だの旧幕だの昔からある概念にひきずられた史観を超越した視点からの言論が可能ですね。いわば。それらによる二元的対立を語りたくて、この本を書かれたんだろうなぁ、と思いました。そうすることで見えてくる真実も多々ある。

一方で、本書のウィークポイントとしては、中国化/江戸化の二元対立が歴史的にどのように具体的に反映されているか、という部分が甘いといわざるをえない点。原理/原則を追求したいタイプの著者さんには、具体例に対してそこまで関心はないのかもしれませんが。

例えば…彼のことばでは明治維新は「中国化」への意思であり、明治期の代表的産業をささえていた(工場の一つ)富岡製糸場は、いわゆる「中国化」が徹底された実力社会で云々…というような記述もありましたが、たとえば明治維新の勝ち組である長州閥の山口出身者の女性(いわば新貴族の女性)が、実力以上に早期に出世しやすかった…といった「例外的事実」は、とくに記述されておらず。

氏の説くように「中国化」への動きはあったのでしょうが、それが徹底されていたとは思えない。氏は「江戸」と「中国」の二つの流れは、混ぜたら危険、と書いていましたが、まさにその混ぜたら危険状態がずっと続いてしまっていたのが現実的な歴史のありかたのように拝見しました。

與那覇氏は「史論の復権」という新書(※対論集)も世に問うておられます。

巻末に用語索引がついている点で、いちおう学術書っぽい作りにはなってはいるものの、「中国化する日本」という本作も、「史論の復権」において、学術論文類とエンタメ的創作物の「中間的存在」だと氏が定義する「史論」的作品として受け取って欲しい…ということなんでしょう。

たしかに興味深い視座を提供してくれるご本ではありました。



by horiehiroki | 2015-01-29 10:10 | 読書