亡き父が八丈島で球根をもらってきてしばらく育てていたという、我が家の思い出の花・フリージア。
母親の薦めもあって今年から栽培にチャレンジしました。
イメージとはまったく違う花でした。楚々とした清潔なイメージの強い花ですが、育ててみたところ、印象の相違に本当におどろかされたものです。
まず球根の時点で、痩せたらっきょうみたいなカタチ。本当にこれ、咲くのか? と思えるほど貧相な外見なのです。
あとで知ったのですが、同時期に植えつけたチューリップや水仙とは異なり、水さえあればとりあえず花は咲くというタイプの球根植物ではない、とのこと。土中の栄養分を元に、ようやく花を開かせるのがフリージアなのだとか……。
その一方で、11月末の植えつけ(11月はじめくらいまでに植えつけるのが普通らしい)だとすでにヒョロッとした芽がか細く出てきているような、そんな意思の強さがある花でした。
土に植えて、一ヶ月ほどでしょうか。ニラのようなかぼそい葉が出てきました。芽吹く速度はまちまち。東京ではわざとギリギリまで球根を寝かせて、12月頃に栽培開始するのもテクニックの一つだそうです。というのも温かいうちに土に入れると、もともとアフリカ産のフリージアはどんどんと成長してしまい、冬をこしにくくなるんですね。
育てて意外だったのは、フリージアの茎や葉がすぐに折れてしまうこと。風が強いとそれだけで折れますし、何かが当たっても折れてしまう。冬をこしにくくなるのは、移動させたり、保護のためにワラなどをかけると折れてしまうから、ということに気付きました。とても脆く、弱いんですよねぇ。しかも、その折れた茎を水にさしておいても、まったく蕾は生長しないまま、熔けてしまったり。やりたい放題、ワガママだけど、脆い、そういう問題児みたいな感じでした。
石灰質を十分に混ぜた土壌を好む植物だし、その手の土壌では、株の徒長も防げるのだそうで、焼いた卵の殻をすり潰したモノなどを与えていますが、あとのまつり。
直射日光のあたる時間なども関係しているようですが、ものすごく好き勝手な方向に伸びてしまうんですねぇ。土はすくなめ、ツボ型の鉢に植えて、ヘリにもたせかけるようにして栽培するといいかもしれません。
これも育てて、はじめて知ったことですが、フリージアという植物は、お行儀が悪い植物です。
のたくるのです。非常に外見がわるい……。
花や葉がペターンと土に倒れてしまったり、酷いやつなどは横八の字(永遠のマーク)みたいにグネグネとくねり、病気か?!と作り手を焦らせるようなまでの自由なカタチになってしまいます。
その割に、最低気温が五度以下が続くと、枯れてしまうそうで、昼間は日にあてて、夜は玄関の土間に取り込むという日々でした。
さて、蕾の存在がようやく確認できたのは、11月末に同時に植えた水仙、セイヨウスイセン、チューリップの類がおわりはじめたころ。まさに、ようやく、です。コメの穂状のものがニラみたいな葉っぱから分離して出てきて、しかもこの蕾の原型はまったくその後のフリージアを思わせるものではないため、不安にさせられました。
が、それが猛スピードで、日に日に膨らんでいき、だいたい5月初め頃、八重のセイヨウスイセンが終わるころに、ようやくさきはじめたのです。
そして今、現在も満開の状態です。最初に出た穂があまりに長く、大きく伸びてしまい、しかもそれが花の波のようにうねっている。切り離して花束を作り、家のあちこちにかざっています。12個ほど、やせたらっきょうのような球根を植えただけなのに、これは素晴らしい収穫量かな。
花は比較的寿命がながく、お得感は強いですね。リビングにおいても、食事の場においても、さしさわりのない程度に上品な甘い香りもします。
しかも、一つの株がどんどん新しい穂を繰り出してくるため、今後も期待できるかなぁといった所。花にすこしアブラムシがついてきているので、ある程度、温かくなったら、オルトランなどを撒いてやったほうがよさそう。また、土に倒れ伏すように咲いている花は早めに切り取り、花瓶で鑑賞してあげたほうがオススメですね。
画像でわかりますかねー。花の花弁には標準的な枚数が決まっているわけですが、フリージアは四枚のものもあれば五枚のものもあり、かなりアバウト……。蕾の向きもテキトーで、変な方向から咲いてしまった場合、茎や他の花と位置関係で潰れてしまうことも。
フリージアは切り花だと人気ですが、実際に育てているお家は少ない理由もこれらにあるか……と。今年、花がおわって球根を掘り上げた時、おそらく球根は植えた時とほぼ同じ、らっきょうみたいなカタチのまま土中にありそうです。来年もチャレンジする予定。来年は白い花の球根があるといいなあ。