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新書「村上春樹は、むずかしい」

今年の2月28日付の
毎日新聞の書評(橋爪大三郎さん)を読んで興味を持った
文藝評論家・加藤典洋さんの新書「村上春樹は、むずかしい」を、家族で読んでます。

村上春樹の作品の魅力って

1・作品に描かれた時代の空気、感傷

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2・愛の喪失の物語、不可能な愛の物語

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というような層を成していて、1と2の層を、複雑で巧みな、文学的な構造が結んでいます。
1をよみながら同時に2が見えてくる・・・というイメージ。わりと小説を読むひとなら1,2くらいまでは気付くのですが、この新書で主に説かれているのは
行間にわれわれが1と2の要素を読んでいる中で、
ときどきちらつく、村上風にいう「おやっ」の部分といえる部分、つまり「3」についてなのかな、と。
ちらっちらっと見えるだけなので、「3」については深く考えもしなかったりするんですが。

新書といってもさすがは岩波新書、かなり硬派なので、途中でそれこそむずかしい、
わかんなくなるって感覚に襲われるのですが、その時、残しておいた
「今週の本棚」の新聞が非常に有効でした。

特に良くできてるなあと思うのは記者さんと思われる人が入れてるキャッチ。

「正義がはっきりしにあい世界への転換」。

これ、批評だけでなく、新書自体のメインの部分についてビシッとまとめられてて見事でした・・・

新書内で語られている、大江健三郎・安部公房などがもっと活発に活動していた時代、
そしてニューアカデミズムの時代、村上の立場は、相対的にかるーく扱われていた・・・という「歴史的事実」。
現在でも韓国や中国では村上春樹は一般的には読まれてはいるが、
尊敬を集める手合いの作家というわけでもなければ、文学としての評が高いわけではない・・・というレポートもじつに興味深かったです。

あと個人的に思ったのは、ドラマの展開法については、とくに韓国と日本はぜんぜん違いますよね。
映画の脚本などを見ていても2、3時間でこれだけのモノをつめこみ、なおかつ自然に見せてくるか!と驚きます。空気を描いた(だけにみえる)作品なんて無い勢いですからね。非常にコシの強いドラマが多いです。

さらにこの新書では時代によって変化する村上の作品についてもしっかり分析された結果が、描かれているんですが(始まった時から村上は村上なんだけど)、昨今の作品を読むかぎり(色彩をもたない・・・とか、短編集とか)村上さんは別のスタイルにむけて動きだそうとしてるのでは・・・とおもわれてなりません。
村上が村上的でなくなる日がくるのかもね。
by horiehiroki | 2016-03-31 03:01 | 読書