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fantôme

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やっぱり宇多田ヒカルは天才だなぁ、と。
名実ともに「復帰作」なんですが、彼女の「音楽」はアルバムを出している・出していないに関係なく絶え間なく続き、深化しており、人生そのものが「音楽」な人であることを痛感しました……。
共演してる人たちは椎名林檎以外はぜんぜん知らなかったけれど、新しい才能が日本に生まれて育ってるんだなぁということ。それ以上に「オトナになった」とか「頭でっかちではなく、”肉体的”な音楽になった」との評があるようですし、宇多田さんもそれを喜んでいるようですね。

自分の感想はそれを否定するものではないけど、過去の作品以上に通しで聞いてみると大きな喪失感を感じる……なにかぽっかり穴が空いてしまうかのような、ぜんぶ持っていかれてしまう感じがありました。心臓の鼓動を意識的に摸しているかのような打ち込み音、あるいは楽器音をベースにした曲が多い印象もあるからか、おどろくほどに情念的な音楽たちです。

それは単純に「道」ではじまったのに、「桜流し」で終わってしまう印象ゆえではないですね……。
桜流しはエヴァンゲリオンの劇場版のラストに流れた時から力作だと感じていましたが、アルバムの中に収めて、はじめて価値が分かった気がします。


「道」にせよ「ともだち」にせよ、テレビで実演の映像を見た時、テロップで出る字幕にあまりに月並みさを感じてしまって「?」だったんですが、目で入る情報と耳の情報はまるで「違う」印象でした。
ブログにも貼り付けましたが、当初、アルバムのジャケが公開され、その”ブレてる感じ”とあいまって「どうなってしまうんだろう」とも思ってましたが(たとえば・・・過去の名作「DEEP RIVER」では恐ろしいくらい・・・まるで毛穴までフォーカスされてるほどのハードなフォーカスで撮られてれてました。よほどその時のカメラマン=先夫さんに信頼がなければ出来ない行為ですよね)

音楽劇場(ムジークテアター)という概念が現代音楽にはあるんですが、いわばまさに本作はそれ。
音(と歌詞の響き)だけでここだけ人間の深淵を語りうるのか……ということには驚きました。
by horiehiroki | 2016-09-28 20:14 | 音楽